十二月とは思えない暖かさの後、また、冬が戻ってきた。
病院の庭に出てみると、ほとんどの木々が葉を落としていた。
昨日の嵐でもう一枚も葉が残っていないであろう。
冬の寂しさを感じる朝である。
昨日、隣のう○この爺さんが退院した。
入院当初、90歳と紹介した爺さんである。
入院してすぐウ○コの匂いを撒き散らした爺さんでもある。
しばらくしてわかったことだが、90越えと思っていたのだが、実際は74歳であった。
歩く姿は杖をついてフラフラ歩く。
話す声もか細い。
そして、話す内容はボケまくっている。
70でもここまで老けるものかとびっくりした。
前日、医者との話で翌日退院と決まっていた。
ボケた爺さんでは話にならないので、奥さんが来たら連絡するようにと爺さんに伝えていた。
その後見舞いに来た奥さんと退院を喜んでいた。
しかし肝心な医者の伝言は忘れていて、奥さんを勝手に帰してしまった。
しばらくして医者が戻ってきた。
どうして奥さんが帰ったかと聞いた。
爺さん、体調が悪いから帰ったと誤魔化した。
一気に話が変わった。
奥さんの体調が悪いのなら、退院しても奥さんが大変になるだけだ。
月曜まで退院延期となった。
かなり落ち込んでいた。
退院延期になってから一切食事に手を出さなくなった。
翌朝、奥さんがやってきた。
爺さんは奥さんに嘘を言って退院を強行しようとした。
その話を聞いた医者が飛んできた。
退院はダメですと冷たく言った。
奥さんの泣きが入った。
退院させてくださいと泣きついた。
退院延期は奥さんの体を気遣ってだからと、なんとか退院が許可になった。
横で聞いていてどうなるのかハラハラした。
特に退院の強行突破をしようとした時は、びっくりした。
この奥さんはよくできた人である。
爺さんの尻拭いを何回もしてきたであろう。
実際、今、手がしびれてケツを拭けなくなっているので、ウンコの度にトイレについていって拭いている。
退院の際、爺さんは知らんぷりして退院して行ったが、奥さんは丁寧に挨拶して行った。
ご苦労様である。