平和な朝である。
昨夜は何事もなく静かな夜であった。
強いて言えば、新しく入った人についている管が抜けて、看護師さんがバタバタしたくらいか・・
私の睡眠にはあまり影響を与えなかった。
久しぶりによく眠れた夜になった。
前の夜事件を起こした爺さんは静かであった。
静かに眠ってくれた。
薬でも飲んだのであろうか。
今も熟睡している。
爺さんは耳が遠い。
遠いというより、ほとんど聞こえない。
聞こえさせようとする大きな声で話さないと伝わらない。
大きな声というより叫び声に近い大きさである。
昼はなんとかなるのだが、夜になると大変である。
夜中、病院内が寝静まっているところで、看護師さんが・・
大丈夫ぅ・・・
と叫ぶ。
爺さんが反応しないと、さらに名前を呼ぶ。
しかし、爺さんは自分の名前はわからない。
看護師さんがお名前を教えてと聞くのだが、答えない。
かなり、認知症も進んでいるようである。
爺さんはトイレだけは自分で行こうとする。
ベットから起き上がって歩いていく。
そして、転ぶ。
これが事件の発端となる。
爺さんはオムツをつけるのを嫌がっている。
そのため、トイレの度に看護師さんは車椅子で連れて行っている。
当然、夜中もである。
その時の会話も大音量である。
私だけでなく、同室の人はみんな寝不足となる。
当然気分は不愉快で、部屋中が暗い空気が漂うこととなる。
耳が遠いということは、入院患者にとって大変なことである。